自主管理マンション 株式会社マンションデータサービス(2003.12掲載)
自主管理マンション
1都3県における全体像を探る
 (社)マンション管理業協会の調べでは、分譲マンションストックの約4分の3を同協会の会員管理会社が業務を受託しています。残る4分の1が同協会に属さない管理会社によるものかあるいは自主管理ということになりますが、現況からみてその大部分は後者によるものと推測されます。ところが、自主管理マンションに関する情報は公開されるケースが少ないため、その実数はおろか分布状況や規模などの特性も明らかではありません。当社はこうした自主管理マンションの全体像を把握するため、データの収集を行いその分析を試みました。

当社が首都圏1都3県で自主管理マンションとして補足したマンション棟数は2400棟、19万戸です。戸数ベースでは全ストックの1割弱に相当します。もちろん、このデータに含まれない未確認のマンションもあるので、実数はこれを上回ることは確かです。


1.首都圏1都3県におけるストックの分布状況
神奈川県と千葉県にやや厚み
 
 左図は地域別の比率を示したものです。これを全ストックにおける比率とくらべると神奈川県と千葉県が3ポイント程度高く、東京都と埼玉県が同じような割合で低くなっています。地域別に見ると、東京都においては都内と都下の比率が64。全ストックの82と比べると都下の比率が高くなっています。神奈川県においては逆に大都市部の比率が高く、横浜、川崎の両市で7.5割のシェアを占めています。

2.規模の特性

戸数ベースでは「大規模」が67%のシェア、棟数ベースでは「小規模」が50
 つぎに規模の特性をみてみましょう。上図はマンション戸数が30戸未満を「小規模」、30〜100戸未満を「中規模」、100戸以上を「大規模」としてその比率を示したものです。戸数ベースでは「大規模」が67%を占めて他を圧倒しています。
 ところがこれを棟数ベースでみると情勢は逆転します。ここでは戸数ベースのシェアが11%に過ぎなかった「小規模」が50%を占めてトップになります。

この逆転現象、つまりストック比率は1割程度であるけれど、棟数では5割を占める「小規模」自主管理マンションの動向が、良好なストックを形成していく面での大きなポイントになるといえそうです。これら小規模マンションが適正な維持管理から取り残されないような適切な施策が望まれます。


3.建築後の経過年数
築後20年以上経過が9割強
 上図は建築後経過年数を
10年単位に分け、そのストック比率を示したものです。ここでのポイントは築20年以上経過したマンションが9割を占めている点です。近年、管理委託業者をマンションの竣工前に決めるケースが多くなり、こうした結果につながったものと推測されます。 一方、マンションは築20年以上経過すると維持管理面でより専門的なノウハウや知識が要求されてきます。これまで事務管理、清掃、それにコミュニティの育成といった業務を中心に運営してした管理組合が、今後高度な専門知識を必要とする建物の維持管理を適正に行っていけるかどうかが今後の課題にといえるでしょう。


4.分譲主の特性

公団、公社が55%、棟数ベースでは逆に民間マンションが86
 上図は、マンションの分譲主が民間会社のものを「民間マンション」、都市基盤整備公団のものを「公団住宅」、住宅供給公社および勤労者住宅協会のものを「公社住宅」としてその比率を示したものです。ここでも戸数ベースと棟数ベースによる分析結果に大きな違いがみられるため、双方の図表を掲載することにしました。
 
 ここでのポイントは「公団」、「公社」の住宅が
55%を占めていることです。この両者は団地形式が主で規模が多いため、費用、人材の面で自主管理に適した要件を備えていることがその要因とおもわれます。もう一つのポイントは「民間マンション」が戸数ベースでは45%であるのに対して、棟数ベースでは86%を占めている点です。これは規模が小さいことによるもので、自主を選択した理由も前者とは異なり多様であると推測されます。なかでも費用面での課題が重要なポイントとみられるだけに、管理業者登録制度と同様、新法の制定に伴って導入されたマンション管理士制度による支援が期待されるところです。


5.管理費および修繕積立金

つぎに管理費および修繕積立金の額を参考までに掲載いたしておきます。これは任意に抽出した145棟のデータをサンプルしたものです。

規模別の管理費・修繕積立金一覧等
規模 種別 月額(円) 1平米単価(円) 下限〜上限(月額・円)
小規模 管理費 11,215 208 3,000〜62,509
修繕積立金 6,785 127 2,270〜24,500
18,000 335
中規模 管理費 11,929 222 1,000〜72,720
修繕積立金 7,517 135 1,612〜23,700
19,446 357
大規模 管理費 7,095 115 2,000〜26,726
修繕積立金 8,268 135 2,000〜22,000
15,363 250
サンプルの抽出方法
 最近
3年間の中古マンション流通情報の中から、管理形態を「自主」とする物件を抽出。当社のデータと照合し補足したものです。