旧耐震基準マンションの分析
1981年6月の建築基準法改正により新しい耐震基準が制定され、この日以降に建築確認を受けた建物に新建築基準が適用されました。他方、新耐震基準の制定以前に竣工した建物は一般に旧耐震基準のマンションと呼ばれ、安全を確認するための耐震診断が求められています。想定震度は旧法が中程度の地震(M5~7)を想定したものであり、新法はM8以上を想定しています。
耐震診断については、各自治体が助成制度を設けて診断費用の補助を行っています。とくに震災時の救助や物資輸送を円滑に行うため、主要道路や鉄道線路沿いのマンションには診断費用の全額補助を行う代わりに、期限を設定して実施努力義務を付けています。
当社では耐震診断を求められている旧耐震基準ストックについての分析を行い、その数値を明らかにし、特性等を公開することにしました。対象としたストックは、法の施行から竣工までの期間を考慮して1982年12月までの竣工物件としました。
- 1都3県に12,600件、83万戸あり、全ストックに占める割合は2.5割。
- 東京集中の傾向が強く、件数ベースで66%、戸数ベースで51%を占める。
- 建物の階高は5階建以下が44%、規模は30戸以下の小型タイプが47%を占める。
- 竣工推移をみると1978年から1982年に至る5年間の竣工物件が57%。
- 公団・公社の大型物件が多く、戸数ベースで24%を占めている。
1都3県 | ||||
都・県名 | 地域名 | 件数 | 戸数 | 平均戸数 |
東京都 | 都内 | 7,429 | 352,557 | 47 |
都下 | 953 | 68,855 | 72 | |
計 | 8,382 | 421,412 | 50 | |
神奈川県 | 横浜市 | 1,364 | 107,376 | 79 |
川崎市 | 477 | 30,638 | 64 | |
相模原市 | 90 | 10,750 | 119 | |
県下 | 495 | 42,441 | 86 | |
計 | 2,426 | 191,205 | 79 | |
埼玉県 | さいたま市 | 208 | 15,572 | 75 |
県下 | 752 | 75,630 | 101 | |
計 | 960 | 91,202 | 95 | |
千葉県 | 千葉市 | 180 | 35,526 | 197 |
県下 | 739 | 90,779 | 123 | |
計 | 919 | 126,305 | 137 | |
総計 | 12,687 | 830,124 | 65 |
関西圏 | ||||
都・県名 | 地域名 | 件数 | 戸数 | 平均戸数 |
大阪府 | 大阪市 | 928 | 88,923 | 96 |
堺市 | 77 | 11,072 | 144 | |
府下 | 863 | 84,584 | 110 | |
計 | 1,868 | 194,579 | 104 | |
兵庫県 | 神戸市 | 592 | 42,914 | 72 |
県下 | 630 | 43,750 | 69 | |
計 | 1,222 | 86,664 | 71 | |
京都府 | 京都府 | 344 | 32,106 | 93 |
府下 | 44 | 7,297 | 166 | |
計 | 388 | 39,403 | 102 | |
滋賀県 | 20 | 2,507 | 125 | |
奈良県 | 91 | 9,197 | 101 | |
和歌山県 | 6 | 319 | 53 | |
総計 | 3,595 | 332,669 | 93 |
上のグラフは1都3県における旧耐震ストックの地域別のシェアを示したもので、東京集中の傾向がみられます。件数ベースと戸数ベースでのシェアの差は平均戸数によるものです。1都3県の平均戸数「67」に対し東京都内は「47」と小さく、件数ベース>戸数ベースとなります。他の3県は大型の団地が多いことからすべて、戸数ベース>件数ベースになっています。
上のグラフは関西圏における旧耐震ストックの地域別のシェアを示したものです。大阪府が件数、戸数ともに5割を超えています。大阪府は平均戸数が104と大きく戸数ベースで6割弱を占めています。
1都3県 | |||
地域名 | 5階建以下 | 6階建以上 | 東京都 | 3,072 | 5,310 |
神奈川県 | 1,469 | 957 | |
埼玉県 | 546 | 414 | |
千葉県 | 470 | 449 | |
計 | 5,557 | 7,130 |
1都3県 | |||
地域名 | 30戸以下 | 31戸以上 | |
東京都 | 4,179 | 4,203 | |
神奈川県 | 1,128 | 1,298 | |
埼玉県 | 368 | 592 | |
千葉県 | 244 | 675 | |
計 | 5,919 | 6,768 |
上のグラフは1都3県における旧耐震基準ストックの1956年以降の推移をあらわしたものです。件数は右上がりの推移がみせ、とくに1978年以降は年間1,000件を超える大量供給が右上がりに続いています。この5件間の竣工数は7,000強で、旧耐震基準ストックの57%を占めています。赤い線で示した平均戸数の推移は1976年移行右下がりになり、小型化していることがわかります。1976年以前は公団の大型団地が主流ので上下動が大きくなっています。