単なる「修繕」から一歩踏み出し「改善」に転換
ガーデンシティ狭山は、2棟、498戸からなる郊外型の大規模マンションである。今回の工事は新築後28年目に実施した第2回目の大規模修繕工事であるが、管理組合では資産価値の向上や居住者の定住化を見据え、様々な環境改善工事を実施した。
大規模修繕工事に付帯する環境改善工事というと、高齢者に目を向けたバリアフリー化など、機能としての改善工事を想像することが多い。しかし、マンションの高経年化を勘案すると、資産価値の向上や、これからの時代を背負う若い世代に目を向けた住空間の質的改善など、広義の改善工事も重要になる。ガーデンシティ狭山ではこれらのことを踏まえ、バリアフリー化などの機能改善はもちろんのこと、住空間の質的改善も積極的に検討することになった。
アンケート調査の結果をもとに様々な議論がなされ、外構回りを中心に大規模な改善工事が実施されることになった。
敷地のメインエントランス廻りにあっては、消防車、はしご車などの大型緊急車両が通れない既存植栽アーチを撤去し、モダンなエントランスに改装した。また、敷地内全体の空間整備を視野に、メインエントランスにあわせて各サブエントランス廻りも改装し、各エントランスを結ぶゴムチップ舗装の遊歩道を新設した。住棟のエントランスホールにあっては手動の開き扉をオートドアー化するとともに、近年新築されたマンションにも見劣りしない空間作りを心がけた。
マンションの大規模修繕工事とは、従来、外壁等の「修繕」という概念であった。しかし各地でマンションの高経年化が進んでいる今、大規模修繕は工事は単なる「修繕」という概念から一歩踏み出し「改善」に転換していく必要がある。
現実的な問題として建替えが困難なマンションが多い中、マンションの超長期的な保全手法の検討は社会的な課題になっている。
住空間の再整備を試みたガーデンシティ狭山の改善工事は、従前の長期修繕を超えた超長期的なマンションの保存手法における大きなヒントになるのではないかと考える。(株式会社スペース・ユニオン 一級建築士・藤木亮介)
アメニティ2011年7月5日号より