1都3県 高経年マンション
1都3県でいちばん古い分譲住宅といわれる宮益坂アパート(東京都・渋谷区)は竣工後60年が過ぎました。そしていま、首都圏には50,000件を超える分譲マンションがあります。ここではその経緯をたどるとともに、高経年マンションといわれる築30年以上のストックにスポットを当て、データによる分析を試みることにします。
首都圏では、戦後、とくに高度成長期にかけて地方からの人口流入により、大幅な社会増が続きました。こうした状況を背景に分譲マンションの供給がはじまり、これに対応する国の施策が講じられました。
1962年にマンションの基本法である「建物の区分所有等に関する法律」が制定されて、マンションの資産としての法律的位置付けが明確になりました。これを受けて利便性の高い東京都心から分譲がはじまり、まず高所得者向けの高級物件が売り出され、60年代後半になると一次取得者向けのファミリータイプが普及しました。一方、国の持家政策の推進のため公団(現:住宅・都市開発機構)による団地型の大規模マンションも60年代に数多く供給されています。
1970年からスタートした住宅金融公庫の制度「公庫融資付き分譲マンション」の供給が拡大し、70年代後半には第4次マンションブームは迎えます。東京への通勤圏として神奈川県、埼玉県、千葉県へと供給の輪が広がってきました。
そして60年が過ぎました。すでにいくつかのマンションでは建て替えられています。ここではその半ば以上の築後30年を経過した物件を高経年マンションとし、データによる分析と今後5年間の増加率についてまとめてみました。
1都3県の分譲マンションストックは2012年12月時点で50,580件。この25%にあたる12,697件が築30年以上の高経年マンションです。全ストックに対する比率は東京都が最も高く30%を占め、千葉県23%、神奈川県19%、埼玉県17%の順になります。
地域名 | 築30年以上 | 全ストック | 比率 |
東京都 | 8,382 | 28,232 | 30% |
神奈川県 | 2,426 | 12,891 | 19% |
埼玉県 | 960 | 5,531 | 17% |
千葉県 | 919 | 3,926 | 23% |
合計 | 12,697 | 50,580 | 25% |
高経年マンションの対全体比は東京都がいちばん高く、なかでも都心部では港区の51%をトップに、渋谷区(46%)、千代田区(42%)、新宿区(40%)、目黒区(40%)の4区が4割台で続いています。マンションの分譲は都心からはじまり、次第に輪を広げてきた経緯がよみとれます。
外観が南欧風の青い瓦屋根と白い塗り壁の秀和レジデンスは、この時代の象徴的なマンションで、ストックの9割が高経年です。クレール、シャンボール、サマリヤ、永谷などこの時期にしか見られないブランドも多く存在します。
一方では国の持家政策の推進のため公団(現:住宅・都市開発機構)や公社による「団地型」の大型マンションも多く供給されました。
しかし、これらの分譲主体の中には事業の縮小もしくは廃止により現存しない会社もあります。
1983~1987年の5年間は「公庫付き分譲マンション」が都内部から郊外に輪をひろげていた時代です。この年代の竣工物件が5年後に高経年マンションに仲間入りします。その数は5,925件。1都3県の高経年ストック12,687件に、これが加わることにより、5,5年後には18,612件になります。増加率は47%です。
地域別に見る増加率は、神奈川県76%、埼玉県51%、東京都40%、千葉県30%となり、東京都中心から様相が変化しています。なかでも横浜市の83%増は注目されます。