豊島区が「マンション管理推進条例」を制定
豊島区では区民の6割以上がマンションに居住していることから、管理運営面おける合意形成の難しさや管理への関心の低さなど多くの課題を抱えています。条例はこれらの課題解決への道筋を示すととに安全・安心・快適な住環境を形成することを目的に制定されました。(2013年7月1日施行)
条例は第6章29条からなり「義務」と「努力義務」で構成され、その実効性を高めるために、マンション管理状況の届け出を義務化し、届け出をしないマンションに対して要請・勧告のうえ、マンション名を公表する罰則を規定しています。また豊島区では分譲マンションの賃貸化が進んでいることから、区分所有者の責務と賃貸で住んでいる住人の責務を別々に定めている点も注目されます。
このはか長期修繕計画の作成、大規模修繕の普及・啓発を行うことで、マンションの長寿命化を誘導するという趣旨から、「長期修繕計画の作成」も義務化し、管理会社に対しては「受託したマンションの管理業務を誠実に履行するとともに、管理組合に対して管理に関する情報の提供と助言を行う」ことを要請しています。
平成21年に豊島区「住宅マスタープラン」を策定。議会サイドからの強い要請も有り、平成22年都市整備部に「マンション担当課」が設立され、条例設定の原動力に成っています。
今年2月に開かれた「21世紀のマンション管理運営を考えるフォーラム」で、豊島区都市整備部マンション担当課長の園田香次氏が出席、条例制定の背景などについてつぎのように講演しました。
マンション担当課が新設されてまずとり組んだのが分譲マンションの実態調査で、その内容をまとめると
『回答率は41.3%』
アンケートを配布できたのは796件で、そのうち329件から回答が得られた。
管理組合の存在不明96件、配布不能は141件、そのうち回答拒否45件
問題は96件の配布不能の様態で、管理組合の存在すら定かでない、管理用のポストもない。行政側の情報が行き届かないとういう意味で、大きな問題点です。
こうした回答のないマンションは管理組合活動が活発でない証左と受け止め、適正化に向けた施策をどう展開し、成果をあげられるかも行政の課題としています。そして管理会社との協力関係については、管理組合への情報提供や管理組合のサポート役として連携し、適正管理につなげていくと結んでいます。
では、管理組合活動が活発でないと指摘された高経年マンションの特性をみてみましょう。当社の調べでは築年帯別のシェアは築30~40年未満が30%、築20年から30年未満が23%となり、両築年帯で5割を超えています。平均規模は前者が36戸、後者が41%でともに区平均の46%を下回っています。
当時は、1973年のオイルショックから立ち直り、第4次マンションブームを迎え、さらにバブルへと向かう高度成長期でした。分譲価格(3.3㎡当たり万円)は1973年の110万台からスタートし、10年後に170~190万円、そしてバブル期の1990年初期には500~700万円に高騰しています。
分譲主は150社を超えますが、築30~40年未満のマンションについては現在も事業を継続している会社は少ないという状況です。築20年から30年未満になると大手ブランド物件が多く見られます。
購入者は場所柄から投機目的の方も多く、平均面積30~50㎡の小型タイプを中心に、価格の上昇を背景に買い替え、買い増しが繰り返されました。こうしたことから区分所有者という意識が希薄になったのではと懸念されます。
管理会社は90社ほどが受託していますが、この年代では自主管理も目立ちます。とくに築30~40年未満においては自主と管理会社不明が多く、リプレイスにより受託したと想定される大手管理会社がこの間を埋めています。
当社で豊島区のマンションストックは分析、そのポイントをまとめました。
竣工推移:10年ごとの築年帯別の推移をみると「築30年以上40年未満が」一番多く30%。平均規模は46戸。30戸以下の小規模タイプは40%。階高は6階建以上が71%。
管理の受託状況では、約90社が受託。大手は規模の大きい築浅物件が主で、あとを中堅各社がきそっています。管理状況が不明な「未確認」物件は、小規模で、ほとんどが賃貸利用です。
管理受託状況のまとめ | |||
分類名 | 平均戸数 | 竣工時期 | |
大手分譲会社系列 | 76 | 築年の浅い物件が中心 | |
独立系大手 | 52 | 1970年代以降 | |
中堅各社 | 51 | 各年代に幅広く | |
自主 | 36 | 1990年以前の竣工 | |
未確認 | 32 | 高経年で、賃貸利用が多い |